9月19日、池袋、帝京平成キャンパスにて、名古屋大学医学部保健学科の鈴木重行先生の「IDストレッチング」の勉強会に行って来ました。受講された方は理学療法士さんや作業療法士さんが多く、皆様、熱心で良い刺激を受けてきました。IDストレッチングは、主に疾患(病気)がある方を目的に、痛みがあって、ストレッチングができない人でも、軟部組織由来の疼痛抑制法の理論を基づき、痛みを抑えながら、ストレッチングができるようにし、疾患を改善させる方法です。

ストレッチングの比較

動き 種類 特徴
静的 スタティック・ストレッチング 反動を利用せずにゆっくりと筋を伸張し最大可動域地点で数十秒間、静止する。
静的 PNFストレッチング PNF運動パターンで等張性収縮(動的)で始まり最終域で等尺性収縮後のスタティック・ストレッチング(静的)。
静的 IDストレッチング 個々の筋に対するID抑制を利用した他動的スタティック・ストレッチング、筋の走行、刺激に対する筋の反応などの解剖学・生理学の詳細な知識が必要。筋緊張の程度により、等尺性収縮を組み合わせる。
動的 バリスティック・スレッチング 反動を利用したストレッチング。筋損傷の危険性や筋緊張亢進の可能性がある。
動的 PNFストレッチング PNF運動パターンで等張性収縮(動的)で始まり最終域で等尺性収縮後のスタティック・ストレッチング(静的)。
動的 ダイナミック・ストレッチング 瞬発的な動きに対応することを目的の1つとしている。拮抗筋の等張性収縮を俊敏に何度も繰り返すことで、目的とする筋の緊張を抑制する。

IDストレチングの定義

IDストレッチングは、主に伸張性の低下(可動域制限)した個々の筋肉を対象とし、筋緊張の低下、可動域および柔軟性の改善などを目的として、個々の筋線維走行および筋連結を意識し、同じ運動方向に関係する筋群を考慮し、筋肉がもっとも効率よく伸ばすことができるストレッチング法である。
そのため、解剖学では、筋肉の付着部、走行、三次元的な筋の位置関係の理解が重要であり、筋肉の触診(皮膚の上から触る)で、どの筋肉なのか理解できる能力が求められます。そして、神経生理学的には、筋収縮機構、神経反射、体性神経系と自立神経系との関係、疼痛および疼痛制限に関与する知識などの専門的知識が重要である。

IDストレチングの目的

  1. 筋緊張の低下
  2. 可動域(柔軟性)の改善
  3. 筋痛の緩和
  4. 血液循環の改善
  5. 傷害予防
  6. パフォーマンスの向上

IDストレチングの対象

  1. ぎっくり腰、寝違え、五十肩(急性)、股関節痛などの、急性の炎症(痛みが強い)
  2. 五十肩(慢性)、慢性腰痛、変形性股関節症、変形性膝関節症などの、慢性疾患(鈍痛)
  3. 中枢神経障害における疼痛、関節可動域制限